Commitment to Make Potato Saladいつもの食卓に、新しいじゃがいもを。
産地一体で挑む「ゆめいころ」普及への歩み。

「これからも美味しいじゃがいもを消費者に届けたい」ー近年、気候変動や病害虫といった農業の課題に直面する中、北海道・北見地区では長年親しまれた「男爵薯」から次世代品種「ゆめいころ」への全面的な移行を決断しました。
今回は「きたみらい馬鈴薯振興会」会長の黒河さんへ、新品種へ移行した背景や産地一体となって進める取り組み、そして今後の展望を伺いました。

プロフィール

きたみらい農業協同組合「きたみらい馬鈴薯振興会」会長 黒河潤さん

北海道・北見盆地にて、祖父の代から続く農家を営む。現在は同振興会の会長として、自ら先陣を切って「ゆめいころ」栽培に取り組みつつ、地域全体で新たなじゃがいも作りに挑む旗振り役を担っている。

「男爵薯」から「ゆめいころ」へ、産地一体の決断

黒河さんが「ゆめいころ」の栽培を始めたきっかけを教えてください。

黒河さん:

うちは長年、生食用の「男爵薯」だけを作っていましたが、3年ほど前からの試験栽培を経て、今年は半分以上が「ゆめいころ」になっています。近年、ジャガイモシストセンチュウ※という病害虫が発生する畑が少しずつ増えてきました。「男爵薯」を作り続けている間はジャガイモシストセンチュウが減らないという生産者からの切実な声もあり、「男爵薯」を続けていくことに課題感がありました。

※ジャガイモシストセンチュウとは、じゃがいもの根に寄生して養分を吸う病害虫のこと。この虫が発生すると収量が大きく低下し、持続的な栽培が困難になる。

そんな折、農協のマネージャーから「こういう品種があるよ」と紹介されたのがジャガイモシストセンチュウ抵抗性品種「ゆめいころ」でした。試しに作ってみたところ、「男爵薯」と同じような栽培方法で問題なく作れること、さらに、肥大が良く「男爵薯」より収量も取れそうだということがだんだんわかってきたのです。そこで、農協も含めて一緒に作付けを増やしていこうとなり、「男爵薯」に代わる品種として「『ゆめいころ』でいこう」と決断しました。

栽培するじゃがいもの品種を変えるというのは勇気がいることだったのではないでしょうか?

黒河さん:

そうですね。これまで生食用の品種としては「男爵薯」ばかりで、過去に一部の畑でそうか病対策として「スノーマーチ」という品種を少し作ったことがある程度でした。しかし、「ゆめいころ」は「男爵薯」並みの早生系で早く出荷でき、作業手順も「男爵薯」と同じで良いため、タイミングがばっちり合いました。
とはいえ、最初の頃はまだ試験栽培程度の量しかなく、市場に送れるサンプルも少なかったため、扱ってくれる業者さんは「今までドーンと行っていた『男爵薯』が全部この品種に変わって本当に大丈夫なのか?」とすごく不安がっていました。

新しい品種ということで、最初はスーパーなど販売先の方々にもなかなか受け入れてもらえなかったのではないでしょうか?

黒河さん:

地道に市場へ足を運んで直接お話ししたり、サンプルを送ったりする中で、徐々に取扱量が増え、評判も良くなって知名度も上がってきました。 さらに、販売関係の方が心配される「単価が買い叩かれるのではないか」という懸念については、農協がしっかりと価格維持に努めてくれています。

販売側の不安はそうやって払拭されていったのですね。一方で、実際に「ゆめいころ」を作る他の生産者の方々は、当初から新品種への移行に前向きだったのでしょうか?

黒河さん:

やはり新品種に抵抗のある生産者もいらっしゃいました。そうした生産者向けには、実際に「ゆめいころ」を作っている畑を見学する研修会や講習会を開きました。現物を見て、「男爵薯」以上の立派なじゃがいもができているのを確認してもらえれば、生産者の不安はだんだん解消されます。 農協と我々振興会が「一緒にしっかりやっていこう」という強い意識を持てているからこそ、この大規模な移行がうまく進んでいるのだと思います。

自然の脅威と収穫の喜び

じゃがいも栽培における北見盆地ならではの特徴を教えてください。

黒河さん:

北見盆地は昼夜の寒暖の差が大きいのが特徴です。そのため、作物の中に作られる糖やでんぷんが多く蓄積されやすくなり、でんぷんの乗った美味しいじゃがいもになりますね。2026年は割と北海道らしい気候なので、そういった地域特有のメリットが出せていると感じます。

昨今の温暖化などの気候変動の影響を、日々の作業の中で感じることはありますか?

黒河さん:

非常に強く感じますね。やはり10年前とは全然変わってきたなという印象で、30度を超える日数がすごく増えています。年によっては6月頃から「この時期にこんなに暑くていいのか」と危機感を覚えます。

また、雨の降り方も変わってきています。最近は局地的にザーッと降るような雨が増えてきました。そういった極端な雨が降ると一番困るのは、土壌に水が溜まることです。低い土地だと水が溜まりやすく、一日でも水が溜まったままになると中のじゃがいもが腐ってしまったり、病害虫が発生したりする原因になります。ですから、雨雲が暗くなってくると本当に危険を感じますね。

日々の苦労の中でもやりがいを感じるのはどんな時ですか?

黒河さん:

やっぱり収穫作業の時ですね。種を蒔いてから出荷までの数ヶ月間、その苦労が実るかどうかは、実際に掘ってみないとわかりません。収穫の機械を入れて、じゃがいもがいっぱい上がってくると「ああ、よかったな」と心からやりがいを感じます。逆に収量が少なかったり、天候不順で変な形のものばかりだったりすると、すごく悲しくなりますね。目に見える地上の葉っぱの部分と、土の中の芋の成長は必ずしも比例しないので、試し掘りをしてじゃがいもの大きさを確認する瞬間はいつもドキドキします。

「ゆめいころ」がみんなの食卓の「当たり前」に

黒河さんの思う「ゆめいころ」の魅力やおすすめの食べ方を教えてください。

黒河さん:

「ゆめいころ」の一番の魅力は、「男爵薯」と比べて目が浅く、皮が剥きやすいことです。ご家庭のお母さんたちや、お手伝いをするお子さんでも扱いやすいと思います。どんな料理にしても美味しく食べられますが、おすすめの食べ方はカレーですね。「ゆめいころ」は煮崩れしにくいので、カレーにぴったりです。もちろん、小さいお子さんがいる家庭ではポテトフライや揚げ物にしてもすごく美味しく仕上がりますよ。

「ゆめいころ」をご家庭にさらに広めていくために必要なことは何だと思いますか。

黒河さん:

「手軽に食べられること」が大事だと思います。ポテトサラダを家庭で作るとなると、じゃがいもを加熱して柔らかくする手間がかかり大変ですよね。共働きのご家庭も増え、暑い中で煮炊きするのも一苦労ですから、メーカーさんには手に取りやすい形で美味しい商品を作っていただき、消費者の方にはそれらを上手に活用していただく。そうして無理なく、じゃがいもをたくさん食べてもらえるようになるといいですね。

最後に、これから「ゆめいころ」が食卓でどのような存在になってほしいか教えてください。

黒河さん:

皆さんが食べているじゃがいもが、自然と「ゆめいころ」に変わっていく、という流れが理想だと思っています。私たちが生産・出荷する量が増えていき、皆さんが気づいた時には「ゆめいころ」が食卓の「当たり前」の存在になっていた、というイメージにしていきたいですね。

取材日:2026年7月3日

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